インコタームズって何？
貿易を行う上で、*インコタームズ（Incoterms）*は欠かせないルールの一つです。貿易契約において、売主と買主の間で「どこまでが各自の責任範囲か」を明確にするための規定です。この記事では、インコタームズの基本をわかりやすく解説し、図解や一覧を使って視覚的に理解しやすい方法を紹介します。
1. インコタームズとは？基本の理解
*インコタームズ（Incoterms）*は、「International Commercial Terms」の略で、国際貿易における商品の引き渡し条件を規定する国際的なルールです。世界中の貿易取引に適用され、どちらがどの時点で責任を持ち、費用を負担するのかを決定します。
国際商業会議所（International Chamber of Commerce: ICC）が商慣習で形成された貿易条件の共通の了解事項や合意事項を国際ルールとして確立する目的として、定型的な貿易条件を一覧としてまとめました。
インコタームズの重要性
インコタームズを理解することは、貿易のトラブルを防ぐために非常に重要です。例えば、輸送費用、関税、リスク負担など、取引条件を明確にすることで、双方の誤解を避け、スムーズな取引が実現できます。
インコタームズの主な種類
インコタームズには複数の種類があり、アルファベット三文字で表され、それぞれ異なる責任範囲を定めています。ここでは最新版のインコタームズ2020の代表的なインコタームズを簡単に紹介します。
2. インコタームズの一覧
以下の表は、インコタームズ2020（最新のインコタームズ）の主な種類とその特徴です。
いかなる単数または複数の運送手段にも適した規則 （Rules for Any Mode or Modes of Transport）
| EXW | Ex Works (insert named place of delivery) | 工場渡し（指定引渡地を挿入） |
|---|---|---|
| FCA | Free Carrier (insert named place of delivery) | 運送人渡し（指定引渡地を挿入） |
| CPT | Carriage Paid To (insert named place of destination) | 輸送費込み （指定仕向地を挿入） |
| CIP | Carriage and Insurance Paid To (insert named place of destination) | 輸送費保険料込み （指定仕向地を挿入） |
| DAP | Delivered at Place (insert named place of destination) | 仕向地持込渡し （指定仕向地を挿入） |
| DPU | Delivered at Place Unloaded (insert named place of destination) | 荷卸込持込渡し (指定仕向地を挿入) |
| DDP | Delivered Duty Paid (insert named place of destination) | 関税込持込渡し （指定仕向地を挿入） |
海上および内陸水路運送のための規則（Rules for Sea and Inland Waterway Transport）
| FAS | Free alongside Ship (insert named port of Shipment) | 船側渡し （指定船積港を挿入） |
|---|---|---|
| FOB | Free on Board (insert named port of shipment) | 本船渡し（指定船積港を挿入） |
| CFR | Cost and Freight (insert named port of destination) | 運賃込み （指定仕向港を挿入） |
| CIF | Cost Insurance and Freight (insert named port of destination) | 運賃保険料込み （指定仕向港を挿入） |
※出典:インコタームズ2020 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ
2.1 インコタームズの選び方
インコタームズは、貿易契約を結ぶ際に、どちらの責任がどこまでなのかを決めるための重要な要素です。売主と買主がどれだけの責任を負うか、どこでリスクが移転するかをよく理解し、取引条件に最適なインコタームズを選択することが必要です。
3. インコタームズの視覚的解説
インコタームズは、言葉だけでなく、視覚的に理解することでより分かりやすくなります。以下の図解で、インコタームズごとの責任範囲の移転のタイミングを視覚的に示します。
インコタームズの図解
1.EXW（工場渡し）
-
- 売主の責任範囲：商品の引き渡し（指定場所）
- 買主の責任範囲：輸送費用、リスク負担
2.FOB（本船渡し）
-
- 売主の責任範囲：出港港までの商品輸送、船積み
- 買主の責任範囲：輸送費用、保険費用、輸入手続き
3.CIF（運賃・保険料込み）
-
- 売主の責任範囲：運賃、保険料、目的港までの輸送
- 買主の責任範囲：輸入手続き、関税
4.DDP（関税込み持込渡し）
-
- 売主の責任範囲：すべて（輸送費用、関税含む）
- 買主の責任範囲：なし
5.DAP（指定場所持込渡し）
-
- 売主の責任範囲：目的地までの輸送
- 買主の責任範囲：輸入手続き、関税
4. インコタームズを選ぶ際のポイント
インコタームズは、貿易契約の初期段階で売主と買主の間で取り決める必要があります。選択の際には、以下の点を考慮しましょう。
- リスク負担の範囲：どこでリスクが移転するかを確認
- 費用負担：運賃や保険料、関税などの負担者を明確に
- 取引条件の適合性：取引相手や輸送方法に合わせたインコタームズを選択
5. まとめ
インコタームズは、国際貿易における重要なルールであり、取引条件を明確にするために欠かせません。売主と買主の責任を理解し、リスクや費用の負担を適切に分担することで、貿易取引がスムーズに進むでしょう。この記事で紹介した一覧や図解を参考に、インコタームズを理解し、次の貿易契約に活かしましょう。
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