アメリカの通関士制度(Customs Broker)とは?
「アメリカにも通関士のような資格はあるの?」
「どんな仕事をするの?試験は難しい?」
この記事では、アメリカの通関士とは何か、その仕事・資格試験・合格率・年収・必要な国籍や市民権の条件、そして日本との違いまでを網羅的に、わかりやすく解説します。
アメリカの通関士(Customs Broker)とは?どんな仕事をするのか
Customs Broker の基本的な役割
アメリカにおける通関士は、「Customs Broker(カスタムズ・ブローカー)」と呼ばれ、U.S. Customs and Border Protection(米国税関・国境取締局、CBP)の認可を受けた貿易専門職です。
彼らは、以下のような業務を担当します。
-
輸出入貨物の申告書作成と提出
-
関税分類(HSコード)と税額の算出
-
規制対象商品の申請(食品、医療機器など)
-
書類の管理、審査、税関対応
-
輸入者や輸出者へのアドバイス提供
アメリカでは、個人でも法人でもCustoms Brokerとして登録が可能です。また、企業に雇用されているブローカーだけでなく、自営業として活動するケースも見られます。
Customs Broker 試験とは?難易度・内容・スケジュール
試験概要
アメリカのCustoms Brokerになるには、CBPが実施する「Customs Broker License Examination(CBLE)」に合格する必要があります。
-
実施回数:年2回(4月と10月)
-
試験時間:4時間(80問)
-
合格基準:75%以上(60問以上の正解)
-
試験形式:多肢選択式(オープンブック)
試験内容の例
-
輸入申告・関税計算
-
HSコードの分類
-
米国の関税法(Title 19 of the Code of Federal Regulations)
-
特恵制度・FTAなどの適用
-
事務処理手続き
オープンブック方式
CBLEは「オープンブック試験」です。つまり、法令集や関連資料を参照しながら解答してよいという制度です。ただし、該当ページを素早く見つけるスキルや実践的知識が問われます。
合格率は?アメリカの通関士試験の難しさを分析
合格率の推移
CBLEの合格率は、10%〜20%程度と非常に低く、アメリカ国内の資格試験の中でも難易度が高いとされています。
-
2023年4月:5.5%
-
2023年10月:34%
-
2024年5月:13%
-
2024年10月:24%
合格が難しい理由
-
出題範囲が広く、かつ専門的
-
英文での法令読解能力が必要
-
実務的判断が問われる
実務経験がある人ほど有利とされるのは、日本の通関士試験と似ています。
年収は?アメリカの通関士の給与事情
平均年収と地域差
通関士の年収は、経験や勤務地、雇用主の規模などによって異なりますが、一般的には以下のような範囲となっています
経験年数 | 年収目安 |
---|---|
初心者(1〜3年) | 約$55,000 |
中堅(5〜10年) | 約$70,000〜80,000 |
上級(10年以上) | $100,000以上 |
通関士としてのキャリアを積むことで、管理職やコンサルタントとしての道も開け、高収入を得るチャンスも増えます。
地域別の年収傾向
-
ニューヨーク、カリフォルニア、テキサスなど港湾都市では高め
-
物流企業や大手商社勤務の場合、年収が上がりやすい
-
自営業(個人開業ブローカー)の場合、案件によって大きく変動
国籍・市民権は必要?日本人でも受験可能?
国籍・市民権の要件
CBLEを受験し、Customs Brokerになるには、以下の法的要件があります。
-
米国市民(U.S. Citizen)であること
-
18歳以上であること
-
過去に重大な犯罪歴がないこと
つまり、米国市民でなければ資格取得はできません。グリーンカード保有者(永住権のみ)では登録できない点に注意が必要です。
日本人がアメリカで通関士になるには?
-
米国市民権を取得すれば可能
-
取得前でも試験の内容を学んで貿易実務に活かすことは可能
-
米国に拠点を持つ日系企業への就職や現地採用のチャンスもあり
日本の通関士との違いとは?
項目 | アメリカ(Customs Broker) | 日本(通関士) |
---|---|---|
資格名 | Customs Broker | 通関士 |
管轄機関 | U.S. Customs and Border Protection | 財務省・税関 |
試験頻度 | 年2回 | 年1回(10月) |
試験方式 | オープンブック(CBLE) | マーク+記述式 |
国籍要件 | 米国市民のみ | 日本国籍不要(在留資格あればOK) |
役割 | 税関手続き代行・コンサル業務 | 通関業務に限定 |
登録形態 | 個人/法人いずれも可 | 基本は通関業者に所属 |
まとめ
アメリカの通関士制度「Customs Broker」は、日本の通関士とは異なる制度設計がされており、試験制度・資格要件・業務内容など多くの点で違いがあります。特に国籍要件(米国市民であること)や、オープンブック方式の専門的試験、自営業としての独立性の高さなどが特徴です。
これから国際貿易に携わりたい方にとって、アメリカの通関士制度を理解しておくことは大きな武器になるでしょう。
アメリカのトランプ関税についての記事についてはこちら👉!

その他貿易用語の解説もこちらでしております👉!
