エンティティーリストとは?初心者にもわかる基本解説

「エンティティーリスト(Entity List)」とは、米国商務省産業安全保障局(BIS)が管理する、輸出規制対象の企業・団体のリストです。国家安全保障や外交政策に反する恐れがあると判断された企業や個人が掲載されます。
エンティティーリストに載るとどうなる?
- 米国製品や技術の輸出・再輸出・国内移転(みなし輸出)にライセンス(許可)が必要
- 多くの場合、ライセンスは「原則不許可」とされ、実質的に輸出禁止
- 2025年9月時点で3,392の事業体が掲載されており、中国・ロシア関連が多数を占めています[1]
このリストは、米国の輸出管理規則(EAR)の一部として運用されており、非米国人にも適用されるのが大きな特徴です。
米国の輸出管理規則(EAR)についてはこちらの記事をご覧ください👉
EAR(輸出管理規則)との関係とは?
EAR(Export Administration Regulations)は、米国が定める輸出管理のルールです。 この規則は、米国製の製品や技術が、どこで、誰に、どのように使われるかを厳しく管理するためのもので、米国外の企業や個人にも適用される「域外適用」が特徴です。
EARの適用例
- 日本企業が米国製の半導体を中国企業に再輸出する場合
- 米国製ソフトウェアを使って開発した製品を海外に販売する場合
このようなケースでも、EARの規制対象となる可能性があるため、「自社が米国企業でないから関係ない」とは言えません。
【2025年9月改正】子会社も対象に!何が変わった?
2025年9月29日、米国商務省は「関連事業体ルール(Affiliates Rule)」を導入し、エンティティーリストの適用範囲を大幅に拡大しました[1]。
改正の背景
これまで、ELに掲載された企業の子会社は原則として規制対象外でした。 しかし、これが「規制回避の抜け穴」として問題視されていました。たとえば、EL掲載企業が新たに子会社を設立し、そこを通じて米国製品を調達することで、規制を回避できてしまうケースがあったのです。
この状況に対し、トランプ政権は強い懸念を示し、規則改正に踏み切りました。
改正のポイント
- 50%ルールの導入:EL掲載企業が50%以上出資する子会社も自動的に規制対象に
- 対象リストの拡大:エンティティーリスト(EL)だけでなく、軍事エンドユーザーリスト(MEU)や特別指定国民リスト(SDN)も対象
- 即日施行:2025年9月29日から発効
実際の事例:NexperiaとWingtechのケース
2025年10月、オランダの半導体メーカーNexperiaが新たにエンティティーリストの規制対象となりました。 これは、親会社である中国のWingtech社がすでにELに掲載されており、Nexperiaがその完全子会社(100%出資)であるためです。
この事例からわかること
- 非米国企業でも、親会社がEL掲載企業であれば規制対象になる
- サプライチェーン全体に影響が及ぶ
- 一部の取引には60日間の暫定的な包括許可(TGL)が与えられたが、2025年11月28日で終了予定
日本企業や非米国人への影響は?
この改正は、日本企業にも大きな影響を与えます。 とくに、中国やロシアの企業と取引がある製造業や商社は、以下の点に注意が必要です。
影響の具体例
- EL掲載企業の子会社と取引する場合、EAR対象品目の輸出にライセンスが必要
- サプライチェーンの再構築が必要になる可能性
- スクリーニング体制の強化が求められる
実務上の課題
- 公的リスト(CSL)には子会社情報が含まれていない
- 民間のスクリーニングツールを活用して、所有構造を調査する必要がある[1]
- 孫会社(子会社の子会社)も対象になる可能性があるため、出資比率の把握が重要
違反したらどうなる?罰則とリスク
EAR違反は、非常に重い罰則が科される可能性があります。
主な罰則
- 行政罰:最大30万ドルまたは取引額の2倍の罰金
- 刑事罰:最大20年の禁錮刑
- 輸出特権の剥奪:一定期間、米国製品の輸出が全面禁止に
実際の違反事例
- 米国企業が中国の軍事大学に無許可でソフトウェアを輸出 → 数百万ドルの罰金
- EAR違反で輸出特権を1年間剥奪された大学も存在
初心者が知っておくべき対応ステップ
ステップバイステップ
- 取引先のスクリーニング:ELやその子会社に該当するか確認
- EAR対象品目の確認:CCLで該当品目をチェック
- ライセンスの要否判断:必要ならBISに申請
- 社内体制の整備:コンプライアンス教育やチェック体制を構築
- 英語対応の強化:米国当局とのやり取りに備える
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よくある質問(Q&A)
Q1. 子会社が対象になるのはどんな場合?

A. EL掲載企業が50%以上出資している場合、その子会社も自動的に対象になります。
Q2. 日本企業でもEAR違反になるの?

A. はい。EARは非米国人にも適用されるため、日本企業も対象です[3]。
Q3. 子会社かどうかの確認はどうすれば?

A. 公的リストでは不十分なため、民間のスクリーニングツールの活用が推奨されています。ですが、どの企業も対策についてはこれから対応を行っていく段階です。
まとめ:今こそ知識と対策を武器にしよう!
エンティティーリストの子会社拡大は、貿易実務に関わるすべての人にとって重要なトピックです。 知らなかったでは済まされない時代だからこそ、正しい知識と対応力が求められます。
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