D/P決済・D/A決済の違いを解説
「D/P?D/A?貿易の決済方法って何が違うの?」
そんな疑問を持った貿易初心者の方も多いのではないでしょうか。
「D/P決済」や「D/A決済」は、貿易取引で頻繁に使われる決済手段のひとつで、いずれも銀行を介して船積書類のやり取りを行う方式です。この記事では、D/P・D/Aの基本的な仕組み、両者の違い、信用状(L/C)との比較やそれぞれのメリット・デメリットまで、初学者にもわかりやすく解説します。
D/P・D/A決済とは?
まずは基本から確認しましょう。D/P(Documents against Payment)とD/A(Documents against Acceptance)は、「手形決済」と呼ばれる貿易決済の形式です。
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D/P(Documents against Payment)
→ 支払いと引き換えに、船積書類を買主へ引き渡す方式。代金を支払わなければ、貨物を引き取ることはできません。 -
D/A(Documents against Acceptance)
→ 将来の支払いを約束(=為替手形を引き受ける)することで、船積書類を受け取る方式。支払い猶予期間があるため、買主にとっては資金繰りしやすいです。
共通点:どちらもL/C(信用状)を使わず、売主銀行・買主銀行が間に入り、書類の取次を行います。
L/Cについてはこちらの記事をご覧ください👉
【貿易用語】「L/C(信用状)」とは誰が発行する?仕組みと流れを解説!
D/PとD/Aの違いとは?
D/PとD/Aの最も大きな違いは、「買主がいつ貨物を受け取れるか」にあります。
比較項目 | D/P | D/A |
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書類引渡し条件 | 代金支払い後に書類引渡し | 支払約束(為替手形の引受)で書類引渡し |
売主のリスク | 小さい | 大きい |
買主の負担 | 高い(即時支払いが必要) | 低い(後払いできる) |
✔ D/Pは現金取引に近く、売主にとって安全性が高い。
✔ D/Aは信用取引に近く、買主にとっては資金繰りしやすい。
L/C決済との比較
D/P・D/Aと並んでよく使われるのがL/C(信用状)決済です。違いを整理してみましょう。
比較項目 | D/P・D/A | L/C(信用状) |
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銀行の保証 | なし | あり |
売主の安心度 | 低め(買主の信用に依存) | 高い(銀行が支払い保証) |
費用 | 安い | 高い(信用状発行手数料など) |
手続き | 比較的シンプル | 書類や条件が多く、手続きが煩雑 |
D/P・D/A決済の流れ
言葉だけではわかりにくいという方のために、決済フローを簡単に図解します。
D/P決済の流れ(Documents against Payment)
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売主が貨物を船積み
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売主銀行へ船積書類を提出
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売主銀行→買主銀行へ書類送付
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買主が代金支払 → 書類受け取り
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買主が書類で貨物を引取
D/A決済の流れ(Documents against Acceptance)
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売主が貨物を船積み
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売主銀行へ船積書類と為替手形を提出
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売主銀行→買主銀行へ書類送付
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買主が手形引受 → 書類受け取り
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支払期日に買主が代金を支払い
D/P・D/A決済のメリット・デメリット
それぞれの方式には長所と短所があります。どちらが優れているというより、取引相手や条件に応じて選ぶことが重要です。
D/Pのメリット・デメリット
メリット:
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売主にとって安全(支払い確認後に書類を渡す)
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不払いリスクが低い
デメリット:
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買主は即時に支払う必要があり、資金繰りに負担
D/Aのメリット・デメリット
メリット:
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買主に支払猶予があり、資金繰りが楽
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信用取引が可能
デメリット:
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売主にとって不払いリスクがある
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買主の信用調査が必要
インコタームズとの関係
D/PやD/Aなどの「決済方法」と、FOBやCIFなどの「インコタームズ(貿易条件)」は混同されやすいですが、意味が異なります。
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インコタームズ:貨物の費用負担・危険負担の範囲を定める
例)FOB=本船積込まで売主負担、CIF=運賃・保険も売主負担 -
決済方法(D/P・D/Aなど):代金の支払い方式を定める
例)代金はD/P(書類引換払い)で支払う、など
インコタームズと決済条件を組み合わせて初めて、契約条件が成立します。
インコタームズについてはこちらの記事をご覧ください👉
【通関士試験・初心者向け 貿易用語集】インコタームズって何?わかりやすく解説!
よくある質問(Q&A)
Q1. D/PとT/Tの違いは?

A. T/T(Telegraphic Transfer)は、電信送金によって先に代金を支払う方式です。一方、D/Pは、船積書類と引き換えに支払う方式で、T/Tよりも売主にとってリスクが低くなります。
Q2. D/Aの引受後に買主が不払いになったら?

A. 売主が支払いを受けられないリスクがあります。D/Aを使う際は、取引先の信用調査が不可欠です。
まとめ|D/P・D/Aの違いを理解して安全な貿易を
貿易における決済方法は、「貨物とお金の交換ルール」を定める大切な要素です。
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D/P決済=支払いと引き換えに書類を渡す方式
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D/A決済=支払いの約束だけで書類を渡す方式
信頼関係のある相手とならD/A、慎重を期すならD/PやL/Cを選ぶのが一般的です。
他にも「L/C(信用状)決済」や「T/T送金」など、貿易決済にはさまざまな方式があります。目的や取引先に応じて最適な方法を選びましょう。